
にぎやかな観光地よりも、静かにおいしいものを味わって、ゆっくり散策をする旅がいい。
そんな大人の旅にちょうどいいのが、冬の高島です。
メタセコイア並木や白鬚神社で知られる高島ですが、湧き水の恵みや冬のあたたかい鍋料理、そして落ち着いたまち歩きなど、また違う楽しみ方もあります。
今回は、湧き水の里で地酒を選び、夜はキジ鍋であたたまり、翌日は旧城下町をのんびり散策。
そんな1泊2日のご褒美モデルコースをご紹介します。
がんばっている日々のご褒美に、派手じゃないけれど確かな"満足"が残る旅を。
高島市の玄関口にあたる近江高島エリアから、冬のご褒美旅をスタート。
まずは「高島といえば」の白鬚神社(しらひげじんじゃ)に立ち寄り、旅の空気を整えます。

その流れで昼食に立ち寄りたいのが、国道161号線沿い、白鬚神社のほど近くに店を構える「白ひげ蕎麦」。
十割そばの木製看板が目印です。


びわ湖の穏やかな水面と、近江の山々に囲まれた立地は、日常の慌ただしさから自然と距離を置かせてくれるお店。
窓越しに望むびわ湖の景色が、食事の時間そのものを、静かで印象深いものにしてくれます。

ここでぜひ味わいたいのが、「名物ぶっかけ白ひげそば」。
天かす、すりごま、甘揚げの短冊、甘酢生姜、白ねぎが添えられ、仕上げにかけるラー油が全体をほどよく引き締めます。

それぞれの素材が主張しすぎることなく、蕎麦の風味を引き立てる一杯は、まさにここでしか出会えない味わい。
蕎麦は、店内の石臼で挽いたそば粉のみを使った十割そば。しっかりとしたコシで十割とは思えない食感です。

つゆの甘味には砂糖を使わず、こだわりの出汁に干し椎茸を隠し味として加えることで、やさしく奥行きのある味わいに仕上げられています。
あわせていただきたいのが、鯖寿司。

肉厚で脂ののった鯖と、ほどよく締めた酢飯との調和は見事で、蕎麦とともにこの土地の食文化を感じさせてくれます。

白ひげ蕎麦の、余計なものを加えない上品な蕎麦の香りと、澄んだ出汁の味わい。
大人の旅のスタートに、ゆっくり深呼吸したくなる昼食時間をどうぞ。
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白ひげ蕎麦で心と胃をゆっくり整えたら、次は"水の町"へ。
湧き水が育てた地酒を選びに、川島酒造へ向かいます。
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今回立ち寄るのは、新旭の町なかに佇む、慶応元年(1865年)創業の酒蔵「川島酒造」。
旅の途中にふっと寄り道したくなる、昔ながらの店構えと凛とした空気感が印象的。

川島酒造でぜひ感じてほしいのが、"水"の存在。
高島・針江地区は、澄んだ湧き水が暮らしの中心にある町。
比良山系に降る雪や雨が、緑豊かな森を通り地下にしみ込みゆっくり濾過され、伏流水としてこの地を流れ、豊富に湧き出しています。
この地で湧き出す水を「生水(しょうず)」と呼び、湧き水を暮らしに活かす「かばた(川端)」文化が受け継がれてきました。

蔵の前にも湧き水が出ており、水に支えられてきた土地のストーリーを感じられます。
暖簾の奥に入っていくと店内や商品棚も味わい深い雰囲気で、お酒選びがますます楽しくなります。

定番の「松の花」はクセが少なく、でも味わいがあるタイプ。料理の風味を邪魔しない食中酒として相性が良いのも嬉しいところ。

特別な一本を探すなら「大吟醸 藤樹(とうじゅ)」という選択肢も。

川島酒造ではウイスキーづくりにも取り組んでいて、「琵琶湖蒸溜所」として蒸溜棟・熟成庫を併設しています。

高島・新旭の伏流水は、長い歳月をかけて濾過された清澄な水。硬度は約20の軟水で、ウイスキーづくりにも適しているそう。

"湧き水の町"を歩いて、最後に蔵で水とお酒(そしてウイスキー)に出合う。
派手な観光ではないけれど、心がすっと整う寄り道です。
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蔵で水とお酒の物語に触れたら、旅の夜はいよいよ"ごちそうの時間"。
あたたかい鍋が恋しくなる季節、料理旅館でとびきりの一品に出合います。
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今回のお宿は、今津にある昔ながらの雰囲気の料理旅館「丸茂」。
創業70年。地産地消にこだわり、おもてなしの心を大切にしているお宿です。

玄関では、温かいスタッフの方々と、ずらりと並んだガンプラなどのプラモデルがお出迎え。
プラモデルはオーナーの趣味だそうですが、細部まで丁寧に仕上げられた姿に、お料理へのこだわりも垣間見えます。


丸茂旅館でリピート率ナンバーワンのお料理が「絶品キジ鍋コース」。
絶品食材でありながら、なかなか食べられる機会のないキジを、一流の腕で魅力を余すことなく引き出しています。
コースは、もっちり濃厚な自家製ごま豆腐からはじまり、向こうが透けて見えるくらい薄くひかれた「鯉の薄造り」へと。
鯉は丁寧に泥抜きされているので泥臭さがまったくなく、身も締まっていて絶品です。

次に運ばれてくるのはいよいよキジ料理。
心臓、肝、砂ずり、ササミ、胸肉の「キジのお刺身5点盛り」を、部位ごとの食感の違いも楽しみながらいただきます。

続いて、ぷりぷりの食感と濃厚な旨みの「モモ肉のタタキ」。

これもまた絶品で、自家製ポン酢やレモン塩、ニンニク塩など、お好みの味わいでいただけます。どれも一度食べたら忘れられなくなるおいしさです。
そして、主役の「キジ鍋」へと。
カゴいっぱいの山盛り野菜と一緒に、キジをいただきます。


透き通った黄金色の絶品出汁にキジの旨みが溶け込み、そのお出汁が野菜にも染み込んで、口に入れるとじゅわっとおいしさと喜びが溢れてきます。思わずうっとりする味わいです。
締めには蕎麦と雑炊、そのどちらも楽しめるという贅沢。

もしお腹がいっぱいになっても、締めのお雑炊を翌朝に回してもらうこともできます。
最後は、地元の有名酒蔵の酒粕を使ったパンナコッタで締めくくり。
全国からファンが訪れるという極上の美食体験は、冬のご褒美旅にふさわしい贅沢な時間になること間違いありません。
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しっかり満たされた翌日は、歩くほどに味わいが増す勝野の旧城下町へ。
旅の余韻を持ち帰るように、お土産探しを楽しみます。
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旧城下町として風情を残す、高島市・勝野(かつの)地区。
まちを歩きながら、その土地ならではの品を探す時間も旅の楽しみのひとつです。

JR湖西線「近江高島駅」からほど近い勝野地区一帯には、古い商家や蔵が連なり、城下町として栄えた面影が今も残っています。
散策の途中に、ふらりと立ち寄りたいのが「淡海堂(おうみどう)」。大正浪漫をイメージしたお店づくりで地域の名所にもなっています。

淡海堂は、滋賀県で唯一の酢醸造場に併設されたお酢とお菓子のお店です。
その歴史は江戸時代にまでさかのぼり、昔も今も多くの人に親しまれています。
びわ湖と山々に囲まれた高島の地では、良質な湧き水が暮らしとものづくりを支えてきました。
淡海堂の酢づくりでも、この地に湧き出る伏流水が仕込みの要として使われています。

店内には、代表商品の「淡海昔玄米」をはじめ、さまざまなお酢がずらり。
古文書をひもとき、当時の製法を再現した天然醸造でつくられています。
水、米、麹菌。
素材と丁寧に向き合いながら代々受け継がれてきた技と想いが、一本一本に息づいています。


安曇川特産のアドベリーを使ったフルーツビネガーなど、地域の個性を生かした商品も。
料理の隠し味としてはもちろん、飲み物としても楽しめる軽やかな味わいが魅力です。
そして淡海堂は、お酢だけでなく「お菓子」も楽しめるのがうれしいところ。

「淡海ロールケーキ」(プレーン・アドベリー)をはじめ、「酒粕れーずんさんど」、「ふわとろプリン」などもそろっていて、散策の合間の"甘いひと休み"にもぴったりです。

店内にはイートインスペースもあるので、歩き疲れたら少し腰を落ち着けてゆっくり選べます。
旧城下町を歩き、歴史に触れながら選ぶ一本のお酢。
旅の余韻を日々の食卓へと持ち帰る。
淡海堂は、そんなお土産を探すときにぜひ立ち寄りたいお店です。
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白鬚神社からはじまり、湧き水の町で地酒を選び、夜はキジ鍋で芯からあたたまる。
翌日は旧城下町を歩いて、最後に淡海堂で旅の余韻を持ち帰る。
派手な観光ではないけれど、静かに満たされていく1泊2日です。
がんばった一年の締めくくりに、高島の冬で、少しだけ深呼吸をしてみてください。